今日の1枚は、Music In The Making、Vogue原盤、1954年1月2日の録音です。
私に欧州ジャズの魅力を教えてくれた復刻レーベルのジャスミンから、2001年に発売された1959年代のイギリスのジャズ作品を、今日から5枚取り上げていきます。
Jo Hunter(tp), Jimmy Duechar(tp), Keith Christie(tb), Don Rendell(ts), Jimmy Skidmore(ts), Ralph Dollimore(p), Johnny Hawksworth(b), Allan Ganley(d)というメンバーでのセッションを収録した作品です。9曲収録されていますが、それらはヴォーグから10吋盤1枚とEP盤2枚でこの世に出ておりました。それら3枚は全て「Music In The Making」というタイトルで発売されていたとのことです。
このアルバム名について調べ始めたのですが、メイキング・ミュージックというイギリスの音楽組織についてのことだろうと考えました。1930年代から組織化されており、音楽活動において多方面の活動をしており、労働組合の意味合いもあるような組織です。この組織に属しているジャズマンが集まってのセッションが、この組織によって企画されたのかと思いました。
しかしながらメイキング・ミュージックという組織名になったのは2000年のことで、それまでの70年間はThe National Federation of Music Societiesという名称でした。そうするとこの見立ては的外れとなります。
先ずは聴いてみましょう。
さてクラーク・ボラン・ビッグ・バンドの「Just In Time」。
斬れ味、スピード感、これがこのビッグバンドの魅力の一つなのでしょう。このことをエレガントに実感できる作品であります。
若い娘が恋について早口で喋っているかのような Derek Humble(as) のソロ、恋の経験を振り返れる余裕のある女性が淡々と語っているかのような Tony Coe(ts) のソロが聴ける「Just In Time」は、このバンドの魅力が詰まっている演奏に仕上がっています。
ちなみにウィキペディアによればデレク・ハンブルは、このバンドのツアー中にケルンで強盗にあい重傷を負ったそうです。それが完全には回復せず、1971年に41歳の若さで亡くなっています。とすると、本作の録音は重傷を負った後のもの。そんな中で元気溢れる演奏を行うのですから、ミュージシャンの底力を感じました。
「Just In Time」が入っている作品の20枚目は、Clarke-Boland Big Band の More Smiles、1969年5月28日の録音です。
ヨーロッパの作品が次々に復刻され出してから、20年近く経ちました。それまでは存在する知らない作品を、或いはレコード店のオリジナル盤コーナーに6桁の値段並ぶ作品を、多くのジャズファンに気軽に聴けるようになったのです。私もそんな一人で、この「今日の1枚」で何枚もそんな作品を取り上げてきました。
そんな復刻の中心の一つが、MPSレーベルの作品の復刻でした。そのMPSの中でも今回の「つまみ食い」のクラーク・ボラン・ビッグ・バンドの復刻は、私にとって実に嬉しいものでした。それまでビッグ・バンドは付き合い程度に有名作品を買っていた程度の私に、自分が好きになれるビッグ・バンドがあることを教えてくれたからです。
本作は「All Smles」の続編と言った内容です。2005年1月19日に「今日の1枚」で取り上げた際には続編ということからなのか、さらっとした私の感想でした。「My Favorite Things」で光っているSahib Shihab(bs)、Ake Persson(tb)のソロが魅力的な「My Haert Belongs To Daddy」とのものでした。
今日は「Just In Time」で誰の演奏が光っているのか、そこに注目しながら聴いて見ます。
さてタレンタインさんの「Just In Time」。
「Fine L'll Lass」というブルースナンバーは、タレンタイン兄弟のブルージーさを発揮させるにはうってつけの曲です。この曲には別テイクが追加収録されているのですが、これはわざわざ追加する事はないだろうと感じました。
一方で追加曲の「Just In Time」。演奏することが嬉しくてたまらないように突っ走るテナーサックス、それならば俺も行くよとのトランペット、楽しく聴ける「Just In Time」でした。
「Just In Time」が入っている作品の19枚目は、Stanley Turrentine の Comin' Your Way、1961年1月20日の録音です。
タレンタイン兄弟のテナー・サックスとトランペットにパーランのピアノ、これだけで大方のジャズファンは「ちょっと聴いてみるか」と思うことでしょう。この「ちょっと」と思わせるところがスタンリー・タレンタインの重要な役割だと感じています。
本作を2007年8月31日に「今日の1枚」で取り上げた際には私は、「My Girl Is Just Enough Woman For Me」の演奏を気に入って、「弟のスタンリーはこの曲の雰囲気通りの穏やかな演奏。一方、お兄さんのトミーは、力強い主張を行っております」と感想を述べました。
さて私が持っている1987年発売の輸入CDには、オリジナリLPには無い曲を追加収録しています。「今日の1枚」で感想を書く際には、そんな追加曲には触れずにいるという方針でおります。しかし「今日の1枚からつまみ食い」では、そのようなことは気にしないでおります。
「Just In Time」は追加曲であります。
「Just In Time」が入っている作品の18枚目は、Sonny Rollins の The Sound Of Sonny、1957年6月11日の録音です。
それにしても、ひどい感想を書いたもんだ。「よく言えば、リラックスしたロリンズ。悪く言えば、集中力のないロリンズ」などと、2006年8月24日に本作を「今日の1枚」で取り上げた際に、私は書いてしまいました。集中力なしに本作を聴いたのは自分なのに。それでも「しかしそんな演奏でも、愛着が湧いてくるところが、ロリンズの凄さなのでしょう」と続けて書いたので、多少は救われます。
数多あるロリンズの作品の中での本作の位置づけは、どんなものなのでしょうか。この1957年もロリンズ大活躍の年であり、リーダー作としては「Way Out West(Contemporary)」「Sonny Rollins, Vol. 2(Blue Note)」「Newk's Time(Blue Note)」を吹き込み、そして11月には「A Night At The Village Vanguard」を残しています。そんな中で本作は、ソニクラをバックに軽快に楽しくスタンダードを演奏した作品とのことで、諸作の中では話題に上らない作品かと思います。
「Just In Time」のレコーディングとしては、ロリンズ唯一の作品である本作を、今日は集中して聴いて見ます。
さてさんの「Just In Time」。
「今日の1枚」の目的の一つが、所持している作品を改めて聴いてみようとのものでした。その後は再び聴くことはせずという作品が多いので、何かしら理由を付けて「今日の1枚」掲載済み作品を聴いてみようというのが、この「今日の1枚からつまみ食い」の目的の一つです。
そんな目的は、今回のラルフさんの作品にまさに打って付けでありました。バンドとしてのまとまりの良さがある演奏の中に、ラルフさんとランディーの2管が色気あるフレーズを加えています。一度聴くと、繰り返して聴いてしまう作品です。
13年前の感想は今でも同じですが、「頭を揺するとサラッと髪がなびくような感じ」での演奏も良いものですなと思って聴き終えました。特に1曲目の「Just In Time」では、都会で忙しく動き回っている自分をふと冷静に見つめている様子が目に浮かんでくるような演奏でした。
「Just In Time」が入っている作品の17枚目は、Ralph Reichert の Reflections、2002年3月8日の録音です。
ラルフ・レイチャートというテナー・サックス奏者は、彼のサイトのディスコグラフィを見ると。1991年から2012年までコンスタントに作品を発表されてきた方です。「Just In Time」が収録されている本作は、「今日の1枚」で2005年2月27日に取り上げました。ジャケを見ていただければ、タイトルは大きなフォントで「REFLECTIONS」と書かれています。しかしラルフさんのサイトのディスコグラフィでは本作のタイトルが「Randy Sandke & Ralph Reichert Quintet live at BIRDLAND」となっています。確かにランディー・サンドク(tp)がゲスト参加したバードランドでのライブ盤なのですが、ラルフさんのリーダー作からランディーとのコ・リーダー作に表現が変わったのには、何か大人の事情があるのでしょうか。
「つまみ食い」する前に、余計なことが頭に入ってしましました。本作への13年前の私の感想は、「現代風ハード・バップという表現を使いたくなる。どジャズを演っているのだ。ストレートに気持ちよくやっているのだ。しかしながら、黄金時代の演奏で感じられる熱気とは違うのです。黄金時代がポマードべっとりの髪型なら、こちらは頭を揺するとサラッと髪がなびくような感じなのです」とのものでした。
「Just In Time」が入っている作品の16枚目は、Walter Bishop Jr. の Just in time、1988年9月10日の録音です。
この作品は本当によく売れました。ただし私が知っていることは、日本で世界で何枚売れたかではありません。ジャズ聴き始めの時から通っている、渋谷にあるジャズディスク専門店でのことです。狭い店内ですので、店主と常連が「あのビショップの新譜は良かったね」というような話は、すぐに他のお客さんの耳にも入り、この連鎖反応がこの店での好セールスに繋がってる行ったのです。
当時はまだレコードとCDとの2媒体で発売するのが、主流でした。そしてその時の流行りだったのか、本作はレコードとCDで収録曲を若干入れ替えて発売されていたのです。そして渋谷のお店では、レコードとCD、両方を買う人が多かったのです。ジャケットが違うのも、1つの要因だったのかもしれません。私もそんな一人でした。
1999年11月14日に本作を「今日の1枚」で取り上げた際には、レコードのモノクロジャケを掲載しました。CDは青と黒が印象的なジャケであります。こちらの方はこの「今日の1枚からつまみ食い」をページ化する際に、掲載したいと思います。
そんな思い出たっぷりの本作を、タイトル曲である「Just In Time」を中心に聴いて見ます。
昨日の1枚は、Hampton Hawes の The Trio Vol.2。
重く響くピアノと流暢なフレーズの数々は、誰もが口ずさむことができるスタンダードを並べた本盤を、ピアノトリオの名品にしております。そんな曲の中にホーズ作の「Blues For Jacque」があるのですが、ホーズが微笑みながら演奏している様子が浮かび上がってくる、楽しめる曲と演奏であります。ホーズはこの曲を2度吹き込んでおり、彼のお気に入りの曲なのかもしれません。曲名にある「Jacque」とは誰なのかwebで調べたのですが、答えは見つかりませんでした。それを想像しながら聴くのも良いのかもしれませんね。
昨日の1枚は、Marty Paich の I Get A Boot Out Of You。
「Moanin'」をビッグバンドで演奏するとは驚きですが、ペイチは原曲の良さを活かしながら洒落た雰囲気で演奏しています。全体を通しても、このペイチの洒落加減を楽しむ作品と言えることでしょう。
こんな風に感じながら聴いておりましたが、最後にタイトルの意味を考えました。当然ながらジャケと合わせてどう考えるかなのですが、普通に考えれば「出て行ってよ」となるのでしょう。しかし、彼女が使っている黄色いタオルに「his」と書いてあるのをどう考えるのか。これを見てからはいろんなことが頭の中で交錯してきています。女性の気持ちが未だに分からない自分に苦笑いしながら、考えるのを諦めました。
今日の1枚は、Marty Paich の I Get A Boot Out Of You、Warner Bros.原盤、1959年6月の録音です。
今まで「今日の1枚」で掲載してこなかったのが不思議でならない、そんな代表作を今日は取り上げます。そして本作はジャケ買いの代表作であります。通称「お風呂」。ジャズ好きならば誰もが知っていることでしょう。また本作と対を成すのが通称「踊り子」であり、そちらは今から20年近く前に、「今日の1枚」22作目として取り上げました。その際にすぐに「お風呂」と思いながら、今まですぎてきた訳です。
マーティ・ペイチのアレンジでのビッグバンド演奏、そしてペッパーのソロ演奏、内容面ではこんなところでしょう。
昨日の1枚は、Tete Montoliu の The Music I Like To Play Vol.3, Let's Call This。
メドレーのように全ての曲が続けて流れてきます。テテにとってのモンクの存在はいかなるものかと思って聴き進めましたが、自分に中で解答らしきものは得られませんでした。よく言われるアート・テイタムの影響云々はテテの音楽からわかることがありますが、モンクの影響と言われるとなかなか難しいものです。強いて言うならば、自分のスタイルをしっかり持つことが、自分の演奏したい姿があることが、ミュージシャンが演奏職人の枠から抜け出せる要因であるとのことでしょうか。
そんなふうに考えながら、モンクに思いを寄せるテテさんの姿もあるのかと感じながら、本作を聴き終えました。ソロで録音に臨んだことが分かった思いです。
今日の1枚は、Tete Montoliu の The Music I Like To Play Vol.3, Let's Call This、Soul Note原盤、1990年1月28日の録音です。
第3集となっていますので1と2がある訳ですが、テテ13枚目の掲載になるのですが、私は持っておりません。
またこの作品はピアノソロですが、過去掲載の12作中ソロでの演奏は、1988年録音の「En El Teatro Real」(2009/3/1)1枚だけです。因みに9枚がトリオでの演奏です。ソロ作品がもっとあっても良いのではと思いながら、自分が好んでトリオ作品を中心に買っただけなのかなとも考えています。
本作はモンクの曲を中心に演奏しており、タイトル曲もモンク作のものです。
昨日の1枚は、Masabumi Kikuchi の Piano Solo "Attached"。
ピアノの響き、ピアノという楽器自体を確かめているような演奏です。その中で何かを感じた瞬間を、録音したのだと思いました。モンク作の「パノニカ」と菊池自作の「イエスター・ブルー」に、音楽の微笑みが舞い降りたものになっています。
録音は2月から4月にかけての、長期に渡るもの。録音場所は Cracker-Jap Sound Studio とありますが、これは菊池所有のスタジオかも知れません。菊池の音楽活動の盟友だったギル・エヴァンその死を、このスタジオの中で菊池なりに過ごしていたのでしょう。
誰かと同じような唸り声は何とかならなかったとも感じながら、静けさの闇の中に強烈な輝きの点をチラつかせている本盤を聞き終えました。
今日の1枚は、Masabumi Kikuchi の Piano Solo "Attached"、NEC Avenue原盤、1989年2月の録音です。
菊地雅章さんの「ススト」を持っています。ジャズを聴く前のこと、フュージョンやクロスオーバーの嵐には無関心でいた私ですが、恐らくは「ニュー・ミュージック・マガジン」を読んで興味を持ったのかも知れません。私はプログレ・ロックのドラマ性を感じ、何度も聴いた記憶があります。
もう一つ菊地雅章さんに関わる思い出としては、「ススト」と同時期のことで、横浜駅西口の岡田屋にあったレコード店(多分すみや)でのものです。店員が常連客相手に、音楽知識を披露している場面でした。マイルス・スクールの面々も今はダメですな、とかそんな話で30分ほどのものでした。その時は詳しい人だなと感じながら、レコード店の店員さんは暇なのかなとも感じていました。
私が語れる菊地雅章さんは、こんなことしかありません。愛称プーさんが9年ぶり録音した作品、ピアノ・ソロでの作品を今日は取り上げます。
今日の1枚は、Louis Armstrong & Ella Fitzgerald の Porgy & Bess、Verve原盤、1965年の録音です。
ジャズ聴き始めの時には、間口を広げようと有名作品を積極的に購入していたことがあり、この作品もそんな1枚です。サッチモとエラのポギーとベス、これは好き嫌いではなく買わなければとの思いでした。
そんな時から30年以上経過した今、こうして「今日の1枚」で取り上げるのですが、私には能書きを並べる知識がございません。国内盤で購入したなら解説を読んで知ったかぶりを並べるのですが、私が持っているCDは「Made in West Germany」ですので、それも無理なこと。ポギーとベスについて、ウィキペディアから少し引用します。
昨日の1枚は、Red Garland の Bright And Breezy。
アルバム・タイトルは収録曲ではないので、この作品のテーマ或いは出来栄えから名付けたものでしょう。Breezy の邦訳には幾つかの意味がありますが、ジャケからすると そよ風 なのでしょう。そうすると同様にいくつかの意味がある Bright は、私は キラキラした との意味だと思いました。キラキラしたそよ風、朝日に木立の中にいる気持ちを表したのではないでしょうか。その中で思いを巡らせた世界を、収録曲に感じ取ったのかなと、少々こじ付けですが思ったりしました。
地味なスタンダードですが味わい深いバラッド「What Is There To Say ?」では、そんな木立の中で思い出の土地を懐かしんでいるように、宝石が輝くようなガーランドの右手からの演奏に聴き入ります。そしてベースソロを挟んでの後半は、今の自分に刺激を与えるかのような抑え気味のブロックコード。
何でも録音は4時間で終了したとのことですが、ガーランドの魅力を存分に楽しめる、ピアノトリオの好盤に仕上がっています。
ではアルネさんとベルントさんの「Body And Soul」。
スカスカしていたのは、私の耳でありました。恐らくこの二人は、中間派を好きで聴いてプロになり、大きな注目を浴びた存在ではなかったが、自分の信じる音楽を誠実に演奏したのでしょう。そんな二人がメロディを大切にして、自分の音楽人生を振り返っている演奏です。そこには大切な歌心が、大きな存在として聴けます。またラングレンは、そんな尊敬する大先輩二人に気持ちよく吹いていただくために、考え抜いた演奏をしています。
別にこの作品は注目されたものではありませんが、偶然手にした私の中で、生き続けるものでしょう。地味だけど素敵な作品です。
そんな中での「Body And Soul」は、ベルントさんのフルートとアルネのクラリネットが霧雨に中に埋れた裏通りのような雰囲気を出しており、小さなパブからそんな通りを見ながら、恋の終わりを悟っているかのような、味わいのある演奏になっておりました。