「イス ジャケ」作品の43枚目は、Jessica Williams の This Side Up、2001年8月16日の録音です。
1948年生まれの女性ピアニストのジェシカ・ウィリアムスさんは、Wikipediaでみる限りでも1976年から2014年にかけて30枚以上のリーダー作品を残しているお方です。そんな中での私が持ったジェシカさんとの接点は、2000年代に入ってすぐに彼女が MaxJazzに残した3枚の作品でした。
本作はその1枚目であり、「今日の1枚」では2002年8月17日に掲載しました。そこではピアノの打楽器としての特徴をいかした演奏に感心したことを、私は述べておりました。
当時53歳のジェシカさんがソファーに身を沈めているジャケットですが、そこには貫禄と自信を感じさせます。
「イス ジャケ」作品の42枚目は、Keiko Lee の Kickin' It with Keiko Lee、1996年3月25日の録音です。
欧州のソファー、その中でも超がつく高級品なのでしょう、ジャケのソファーは。そして大人の魅力のお足、そそるジャケです。この表ジャケだけを見れば、ケイコ・リー本人ではなくモデルかもと思ってしまいますが、裏ジャケにはこの上部、つまり本人のお顔が写っています。
2005年2月14日に本作を「今日の1枚」で取り上げた際には私は、「声が好みではない」とし冷淡な感想を書いておりました。それから15年、少しはこのジャケの魅力に正面から向き合えるようになった今、本作をどのように感じるのか、楽しみです。
さてウィリアムソンさんの「イス ジャケ」作品。
15年前と今回、私は何をこの作品に怒っていやのであろうか。重い演奏を聴いた後に本盤に接すれば、穏やかな気持ちになる演奏が詰まった作品です。ギターとピアノがいきる「Westwood Walk」、なめらかな「A Ballad」、好調なカルテットの「Simbah」、軽いブルースで決めての「Blue at The Roots」と、ウィリアムソンさんのピアノが穏やかな風を運んでくれます。
マリガンの曲作りのうまさ、そしてピアノレスのマリガンが作った曲をピアノで楽しむ、そんなプロデューサーの気持ちを、ようやく感じられました。
【この曲、この演奏】
有名なスタンダードに「How High The Moon」という曲があります。ベニー・グッドマン楽団に所属していたヘレン・フォレストが1940年に大ヒットさせた曲であり、多くの歌手に謳われています。またレス・ポールとメリー・フォードが組んで1951年にヒットさせました。また資料14によれば、この曲のコード進行の面白さに目をつけて、ガレスピーがミントン・ハウスでこの曲を取り上げたことによって、多くのジャズマンに浸透していったようです。そしてこの曲のコード進行を基にジャズマンが曲を作っていったそうです。パーカーの「オーニソロジー」と「バード・ラブ」、ホーキンスの「ビーン・アット・ザ・メット」などです。
資料09によれば、このコルトレーン作の「Satellite」もそんな曲と思われる、としています。本編が「月」なので、このコルトレーン作のは「衛星」にしたとか。
この曲のコルトレーンの演奏記録は、スタジオ録音は本セッションだけですが、1960年7月にフィラデルフィアの小ボートでのライブで、この曲を演奏したとのことです。(資料07)
さて演奏ですが、テナー・サックスを吹くコルトレーンはピアノレスでこの曲を演奏しており、コード進行をもとに表現できる可能性を模索しているような、急速な演奏を行っています。確かに「How High The Moon」を感じる部分がありますが、何も前提をつけずに聴けば気付かない程度のものです。
この日の後半セッションからは唯一 1419(Coltrane's Sound) に収録され、1964年6月に世に出ました。
【この曲、この演奏】
1962年7月にアルバム1382(Coltrane Plays The Blues)に収録されたこのテイクは、「Blues To Elvin」同様に最後のテイクであり、またエルヴィンのドラムに力強さが増したテイクです。コルトレーンのテナーにはインパルス期の深みはまだ感じられませんが、それに向かっている様子がうかがえる内容です。
-15 Blues To You (alternate take)(5分35秒)
この日の第二部は、やはりブルース・ナンバーへのトライアル・セッションと言えるのでしょう。そしてこの曲では、ピアノレスでの演奏、コルトレーンとエルヴィンがどのように絡み合っていくかの試しなのでしょう。この最初のテイクでは、コルトレーンの演奏に対してエルヴィンが間合いを確認しているような演奏です。
なお資料07によれば「Blues To Elvin」と同様に、「Promotional tape」にはこのテイク1には6秒間のリハーサルが収録されていたとのことです。
-16 Blues To You (alternate)(5分30秒)
この曲2度目の演奏は、テイク1とほぼ同様の内容です。
19601024-13
Blues To Elvin (John Coltrane)
(7分53秒)
【この曲、この演奏】
この曲の4テイク目であり、これが本テイクとなり、1962年7月にアルバム1382(Coltrane Plays The Blues)に収録され、世に出ました。
前のテイクの流れをくみ、 E♭ で演奏されています。しかしここではエルヴィンの、特にシンバルが強調された演奏になっています。そしてバンドとしてのまとまりが生きてきており、コルトレーンにとってスロー・ブルースでのバンドの手応えを感じた演奏だったのでしょう。
19601024-10-12
Blues To Elvin (alternate take) (John Coltrane)
【この曲、この演奏】
「あるかないか分からないテーマ、とってつけた様なタイトル、リラクゼイションに満ちたオーソドックスな演奏」と資料09で評されたコルトレーン作のこの曲、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。本セッションでは4回演奏され、最後のテイク4が1382(Coltrane Plays The Blues)として世に出て、他の3つのテイクは資料16で初めて世に出ました。
-10 Blues To Elvin (alternate take) (10分59秒)
本テイクとなったテイク4よりも3分長く、ここでは演奏されています。演奏内容は、このバンドでのスロー・ブルースの演奏スタイルを確かめるかのような感じであり、コルトレーンはリラックス感もあり、また手探り感もあるものです。またタイナーはこのバンドでの自分の役割を掴んでいくような、緊張感も感じる演奏です。この時期のコルトレーン・バンドを、気軽に楽しめる演奏と言えるでしょう。
資料07には、このテイク1について、二つの情報を掲載しています。
一つ目は資料16で世に出た演奏の前に、27秒のリハーサルが「Promotional tape」にあったとのものです。そこでコルトレーンは、「Don't play it, don't play it too fast」と言っているとのことです。
二つ目として、このテイク1は E で演奏されており、他の3つのテイクは E♭ で演奏しているとのことです。これはテープの再生スピードによるものではないと、資料07では念を押しています。
-11 Blues To Elvin (false start) (9秒)
コルトレーンが加わる前に、演奏は中止となりました。タイナーのピアノが止まってものですが、キーの変更での何らかが中止の理由なのかも知れません。
-12 Blues To Elvin (alternate) (6分1秒)
確かにテイク1と比べれば、やや音が下がっている気がします。演奏ですが、コルトレーンに多少のイライラ感を感じますが、もっとアグレッシブにとの思いなのかも知れません。演奏は最後まで行われていますが、テイク1の半分弱の演奏時間であり、コルトレーンがメンバーに目で合図して演奏を終わらせたのかなと、私は感じています。
19601024-06
Body And Soul (alternate take) (Johnny Green, Robert Sour, Edward Heyman & Frank Eyton)
(5分59秒)
【この曲、この演奏】
続けてこの名曲を演奏しています。こちらの演奏は、1975年1月に1668(Alternate Takes)で世に出ました。
なお資料によっては2回目の演奏が本テイクとする記述となっていますが、ここではアトランティック公式記録である資料16に従っています。
さて演奏ですが、本テイクよりも穏やかな感じに聴こえる演奏ですが、一般的な演奏から見れば異質なものなのでしょう。個人的に言えば、コルトレーンはこの曲をライブで積極的に取り上げていき、この名曲がコルトレーンの手で生まれ変わっていく姿を見たかったです。
さてこの日のセッション第一部ですが、コルトレーンはここで終わり、リズム陣だけで「Lazy Bird」と「In Your Own Sweet Way」を演奏しています。もしコルトレーンが参加していれば、「Lazy Bird」は1957年9月の「ブルー・トレイン」以来、「In Your Own Sweet Way」は1956年5月のマイルスのマラソン・セッション以来(他に音源未発表の1958年のマイルスのライブあり)となります。欲を言えば是非ともそれを聴いてみたかったです。
ではこの4月5日の読売新聞から少しばかり紹介します。
・4面 政治面には首相動向、小泉首相の一日(3日)があります。12:01にホテル・ニューオータニのガーデンコートクラブで、成田豊電通会長との会食(他に2名)となっています。電通と仲良しの政府は、この時期も活発だったのでしょうか。
・29面 地域面に歌謡ショーの広告が五つ並んでいます。左から、和田アキ子(NHKホール)、氷川きよし(渋谷公会堂)、森進一・森昌子(よこすか芸術劇場)、ピンク・レディー(中野サンプラザ)、そして寺田恵子(渋谷 ON AIR WEST)です。
・TV欄 NHK 14:10から「ガッテン選」との番組があり、この日は「決定版・ギョーザの鉄則」です。誰でも一家言あるであろう餃子、いつでも人気のようです。