今日の1枚は、Steve Lacy の Only Monk、Black Saint原盤、1985年7月の録音です。
レイシーお得意のモンク集、お得意のソロ作品です。
キュビズムの影響を強く受けたジャケットについては、「Thelonious Monk Chvalier du Hot by Victor Braumer-1950」とクレジットされてます。作者について調べたところ、スペルが一つだけ違うのですが、ルーマニアの彫刻家であり画家の方がいます。「Sevrage du Moi (1949) 」と題された作品は本作ジャケと画風が似ているので、ジャケの作者はVictor Braunerなのでしょう。この画風のどの辺がモンクなのかは私の理解力不足なのですが、気になったのは1950年の作品であること。確かにモンクは1940年代から刺激的な活動をしておりましたが、その活動がルーマニアまで伝わってたことになります。NY生まれのレイシーは、1940年代は10代でした。ルーマニアでも知られていた存在のモンクに、レイシーが惹かれていったのは当然のことなのでしょう。
昨日の1枚は、Enrico Rava の Il Giro Del Gorno In 80 Mondi。
ブルース・ジョンソンというギタリストについてネットで調べましたが、情報が得られませんでした。その演奏スタイルは、ブルースとファンクの感覚を絶妙にブレンドしたものです。このギターと哀愁トランペットのラヴァの対峙が、本作の聴き所です。曲によりジョンソンのギターに近くラヴァ、曲によりラヴァのトランペットに吸い寄せられるジョンソン、二人の存在感が生きている作品と言えます。
今日の1枚は、Enrico Rava の Il Giro Del Gorno In 80 Mondi、Black Saint原盤、1972年2月の録音です。
アルバム名をネットで翻訳させると「80世紀のGiro Del Gorno」となりました。それでは「Giro Del Gorno」とは何かと検索すると、本作に関するページしかヒットせず、そこで調べを終えました。
トランペット奏者のエンリコ・ラヴァに関しては、「今日の1枚」で5枚取り上げてきましたが、それらは1996年以降のものでした。本日取り上げる作品が録音された1972年はラヴァが29歳の年、そして自分のバンドなどを通して多彩な音楽活動をし始めた時期になります。
Bruce Johnson(g),Marcello Melis(b),そしてChip White(d)との演奏です。
昨日の1枚は、Ohta Kanji の Blue Highland。
誰が言ったのかは知りませんが、日本のソニ・クラと太田さんは呼ばれていたとのことです。ソニ・クラに似ているのかは置いといて、聴く者の心にそっと、しかし鋭く入ってくるピアノを聴いていると、静かに本作が評判になっていたことが分かります。
「My Ideal」の輝きと優しさに酔いながら、太田さんはこの22歳の時にミュージシャン魂を全てこの作品にぶつけたのかなと強く感じました。
初リーダー作が代表作、そんなピアニストの代表例を言える作品です。
今日の1枚は、Ohta Kanji の Blue Highland、Crown原盤、1981年1月の録音です。
1959年生まれの太田寛二は、10代後半からプロ活動を始めたピアニストで、現在でも積極的にライブを行い、新譜制作にも取り組んでいる方です。この太田の本作品は、長らくCD化というか再発を望まれていた作品です。
1990年代の日本ではピアノ・トリオが大人気となり、オリジナル盤市場でもコルトレーンはどんどん値を下げ、ピアノ・トリオはどんどん値を上げておりました。そのようなピアノ・トリオ人気の光景に私は渋谷のジャズ専門店で接していたのですが、そこではやはり本国アメリカ及びヨーロッパの作品がその対象でした。しかしながらこの太田さんのピアノ・トリオ作品については、手にしたい方々が多かったのです。
1981年に、太田まだ22歳の時に、本作は吹き込まれました。この時に新譜買いしなかった多くの人が本作に接することができたのは、2006年にディスク・ユニオンから発売された時でした。
小杉敏(b)と岡山和義(d)との録音です。
昨日の1枚は、Larry Willis の Just In Time。
切れ味鋭いスピードを味わえるピアノ・トリオ作品です。新譜で店頭に並んでいた当時は、渋谷のジャズ専門店の常連客の間で評判になったことを思い出しました。ハンコック作の「One Finger Snap」では、曲名の仕草が似合う危険な雰囲気が香る、この三人の息が合った演奏を楽しめます。
ジム・アンダーソンが録音するピアノは生きている音を感じさせてくれるなと思いながら、本作を聞き終えました。
今日の1枚は、Larry Willis の Just In Time、SteepleChase原盤、1989年7月の録音です。
幅広い音楽活動を行ってきたピノ奏者のラリー・ウィリスですが、私が接してきた彼はジャズ・ピアニストとしての姿だけです。サイド参加で彼に接してきたのですが、リーダー作を2枚持っています。1989年に新譜として購入した本作、そしてエリック・アレキサンダー参加ということで購入した2007年録音作品であり、後者は「今日の1枚」で2009年8月4日に取り上げました。
ボブ・クランショウ(b)とケニー・ワシントン(d)のトリオで吹き込んだ本作を、今日は楽しんでみます。
昨日の1枚は、Bud Powell の Blues For Bouffemont。
私は全盛期パウエルを好きですが、それ以降パウエルも大好きです。神業パウエルと人間パウエル、どちらも好きです。この作品を聴いていると、人間味あふれるパウエルさんの姿が目の前に浮かんできます。この録音時期は40歳目前のパウエルさんですが、中身の濃い人生を感じさせます。
私は国内CDを1989年に買ったのですが、封入解説を書いているのは佐藤秀樹さんです。タイトル曲に関して、「ブルースを好んで弾いたように思えない彼だが、淡々とした雰囲気に中に自分の心境を綴ったかのような演奏である」と書いてます。今回この作品を聴いて私は、この通りのことを感じました。
今日の1枚は、Bud Powell の Blues For Bouffemont、Black Lion原盤、1964年7月の録音です。
今日から4枚、何故この作品を「今日の1枚」に掲載していなかったのか、との作品を取り上げていきます。
パウエルのパリでの生活の模様は、特に最後の年の1964年の姿は、かつてここで4枚取り上げてきました。今日取り上げるのは、8月16日にNYに戻る2週間ほど前の演奏を納めた作品です。
タイトルにあるブフェモンとは、パリから北へ25km、モンモレンシーの森の隣にある街です。パリ滞在中にパウエルは、この地にある療養所にいたことがあるそうです。「Blues For Bouffemont」という曲は、恐らくそこでパウエルが作ったものなのでしょう。
さてヘイズさんの「楽器ケース ジャケ」作品。
フロント3人の個性の違いが楽しめ、またジャズを愛する気持ちが伝わってくる1枚です。特に最後のメドレーが聴き所でしょう。「If I Had You - Alone Together - For Heaven's Sake」と続くのですが、まるで同じ曲のように感じさせます。温かみのムーディ、泣かせのヘイズ、悟りのカークと、3人のテナー・サックス・ソロが楽しめます。特にカークはリード無しで吹くということをしており、独特の効果を出しながらも、リードは大切なものだと痛感させてくれます。
このメロディを支えているのはリズム陣。ジョーンズの落ち着いたベースとヘイズのブラシが、3人のテナーの響きを活かしています。
さて何故に私は、14年前にこの作品を否定的に感じたのか。2005年のこの時期は私は香港に駐在しており、中国の深センに現地法人を作るべく動いていました。その仕事は香港の責任者の私、深センの責任者になる者、そして本社(日本)側を固める人間、この3人で行っていました。2003年のSARS騒動で出鼻を挫かれたこの仕事は、特にこの時期はこの3人が力強く動かなければ進まない者でした。しかしながら日本側固め役の人間が、能書き垂れと手柄自慢の動きをしており、私ともう一人はかなりイラついておりました。
そんな中でこの作品を聴く前に、3人バリバリに絡んでいけよ、との思いになっていたのでしょう。そんなことで失礼なことを14年前に書いた本作品、私に中で今は、愛聴盤になって行く予感がしています。