昨日の1枚は、Oded Tzur の Here Be Dragons。
幽玄な海の神秘の世界を描いたかの演奏、サックスがピアノとベースに語りかけるように演奏が続きます。地図製作者が未開の地域や危険な地域に、「Here Be Dragons」と入れるとのことです。これがアルバム名になっており、そして1曲目に収録されています。ゆったりと落ち着いた演奏が、いつ危険な状態に、と思いながら聴いていました。しかし、ゆったりと落ち着いたまま終わり。多少の戸惑いはありましたが、演奏はなかなかなものです。
ドラムがリズム・キープするのではなく、ブラシやマレットも用いて効果音として機能しています。これも効果的なのですが、この四人の演奏スタイルが最後まで続きます。そして最後まで聴かせるところはお見事でした。
次に買うオデッド・ツールの作品では彼の違う面を味わいたいと思いながら、プレスリーの「好きにならずにいられない」でさえも幽玄な海の神秘の世界で表現する、この作品でのオデッド・ツールのスタイルは素晴らしいねと感じて、聴き終えました。
今日の1枚は、Oded Tzur の Here Be Dragons、ECM原盤、2019年6月の録音です。
テルアビブ出身のテナー・サックス奏者 オデッド・ツールは、テルアビブでの音楽活動の後に、2007年からはロッテルダム音楽院で学びました。その後にインド音楽にも関わり、2011年からはNYのジャズ・シーンで活動しています。(以上はWikipediaドイツ語版から引用)
数枚のリーダー作を発表している彼ですが、今日取り上げる作品が最新作となります。Nitai Hershkovits(p), Petros Klampanis(b), そして Johnathan Blake(d) との演奏です。
昨日の1枚は、Omri Mor の It's about time !。
イスラム教徒がほぼ全てを占めるアルジェリアとモロッコでユダヤ人、ここに私には難しい点がありますが、オムリはこの北アフリカでメロディをリズムにどのようにぶつけるかを探求した、そんな風にこの作品を通して感じました。
アヴィシャイ・コーエンとのデュオでの「Tears」、そこにドラムを入れての「Sica」、この二曲の流れは実に素晴らしい時の流れでした。
タイトルの意気込みが理解できる本作品を聴けば「是非、次も」となるのですが、オムリのサイトで確認したところ、第二作は発表されていないようです。
今日の1枚は、Omri Mor の It's about time !、naive原盤、 2016年6月の録音です。
オムリ・モーアとカタカナ表記される、このイスラエル出身ピアニストについてはWikipediaにページがありませんでした。ディスク・ユニオンのページによれば、オムリの名前が登場したのは2000年代中頃の「The Omar Avital Marlon Browden Project」、トランペットのアヴィシャイ・コーエンのバンドに参加し、また2017年にはベースのアヴィシャイ・コーエンのバンドの一員として来日したようです。
イスラエルジャズ界の重鎮たちから評価されているオムリの、初リーダー作を今日は取り上げます。Avishai Cohen(b), Karim Ziad(d)との演奏、そして Michel Alibo(e-b), Donald Kontomanou(d), Maalem Abdelkebir Merchane(vo)との演奏、二つのセッションから構成されている作品です。全9曲、「You And The Night and The Music」を除き、オムリ作の曲が並んでいます。
ライナーノーツにオムリが文章を寄せていますが、その冒頭で彼は「アルジェリアとモロッコ、この北アフリカの素晴らしい音楽との私の長い関わりの成果が、この作品だ」と述べています。
昨日の1枚は、Shai Maestro の The Road To Ithaca。
NY州中部にIthaca(イサカ)という都市がありますが、このアルバムのタイトルとは関係ないでしょう。他にネット検索でIthacaでヒットするのは、ギリシャにあるイタキ島です。シャイはイスラエル生まれですが、ギリシャに住んでいた先祖がいるのかもしれません。この作品を聴いていると、他のイスラエル出身ジャズマンには感じられなかった、しかしイスラエルのような色わいを感じました。
このアルバム全体を通して言えることですが、端厳な美から始まり、徐々にシャイのアレンジとリズムの妙で生身の迫力を感じさせる演奏になっています。ここが彼の個性であり、その魅力なのでしょう。
さて本作の最後に、女性歌手Neli Andreevaが参加している「Malka Moma」という曲があり、日本の民謡にもあるような雰囲気を醸し出しています。曲名は「若い娘」との意味のブルガリア語、シャイの先祖のことをあれこれ勝手に想像しながら、第三世代シャイの作品を堪能しました。
今日の1枚は、Omer Avital の Room To Grow、Smalls原盤、1997年の録音です。
Wikipediaによれば、ベース奏者オマー・アヴィタルの本作品は、発売としては第五作目になるようです。しかし録音は1997年の初頭のことですので、前回(2020/11/6)取り上げた1996年録音作品同様に、人気が出てきたオマー・アヴィタルのライブ音源を10年後に発売した、とのものでしょう。
1996年のライブとメンバーはほぼ同様で、ドラムだけが Joe Strasser に変わっています。演奏曲ですが、1996年盤でも演奏されたオマー作の「Kentucky Girl」、スタンダードの「It's Alright With Me」、そしてコルトレーン作の「26-2」の三曲で60分超えとなっています。「伸びしろ」と名付けられた本作品を、今日は聴いてみます。
昨日の1枚は、Avishai Cohen + The International Vamp Band の Unity。
ピアノで自己主張の場面もありますが、やはりインタビューでアヴィシャイが述べている通りに、音楽の流れに精力を傾けているアヴィシャイです。その流れは清涼感あるものですが、そこに加える味わいは幅広いもので、音楽内容としてはインターナショナルというよりユニバーサル、とのアヴィシャイの発言にうなづけるものです。
さて私はこのバンド名の「Vamp」の意味を考えておりました。「メロディの導入部分もしくは間奏部分で演奏される、リズム・パターンのみの演奏のこと」「短いコードの繰り返しなどによる伴奏パターン」との意味が、音楽用語のヴァンプにはあります。そして他にもこの言葉には「(男を)誘惑する」との意味があります。「音楽に、ジャズに誘惑された男たちのバンド」、このアルバムの内容からはこの意味かなと感じながら、国内盤限定ボーナストラック2曲も楽しみながら、この作品を聴き終えました。
今日の1枚は、Avishai Cohen + The International Vamp Band の Unity、Stretch原盤、2001年の録音です。
今年の中旬の二ヶ月間にイスラエル出身ジャズマンの作品を50枚弱購入しましたが、新譜に近い作品以外は中古での購入となりました。その中に一作品だけ日本プレスのものがあり、それは今日取り上げる作品です。
ややこしい言い方になりますが、ベース奏者のアヴィシャイ・コーエンがピアノを演奏している作品であり、イスラエル三人、そしてアルゼンチン、キューバ、メキシコから各一人、四カ国六人からなるバンドの最初の作品になります。
さて国内盤CDには、小川隆夫さんによる解説が封入されており、氏が行ったアヴィシャイへのインタビューがあり、そこにピアノ演奏作品を作った経緯がありますの、紹介します。
「2000年1月のことだった。ビザの書き換えでぼくはエルサレムに帰っていた。けれどちょっとした問題があって、ビザが発給されるまで2ヶ月間待たされることになったんだ。それでポッカリ時間が空いたんで、前々から考えていたことを実行に移そうと思いついたのさ。ピアニストとして演奏することをね。それで友人だったベース奏者のヤジル・バラスとドラムスのダン・アランを誘って、西エルサレムの小さなクラブで演奏を始めた」
またインタビューでは、次のこともアヴィシャイは述べています。
「同時に気がついたのが、ベーシストとしてバンドを率いるのとピアニストとしてバンドを率いるのとではまったく違うということだった。どっちがいいって言うんじゃなくて、音楽に対する見方がそれぞれで違っているんだ。ベーシストの場合は、サウンド全体のバランスをまず考えてしまう。ピアニストでいるときは、音楽の方向性がとても気になる。自分が音楽やグループを引っ張っていかなくては、という気持ちがピアノを弾いていると強くなるみたいだ」
Antonio Sánchez(d, vo), Diego Urcola(tp), Yosvany Terry(as, ts), Avi Lebovich(tb, vo), そして Yagil Baras(b) との演奏です。
昨日の1枚は、Third World Love の Sketch Of Tel Aviv。
ヨナタン作のタイトル曲は、タンゴ調のテーマをベースに、街の揺らぎを表現した演奏になっています。ベースの力強さ、エフェクト多めのトランペットが、テルアビブでの生活の揺れ動きを、決して過剰なものとしないで演奏しきっているのがお見事でした。そしてその流れには常にヨナタンさんの凛としたピアノが流れていました。ヨナタンさんの演劇との関わりが、なんとなく感じられるものでした。
他の曲はよりドラマチックな演奏となっていますが、その中で「Hareshut」は「traditional Jewish-Yemenite」とクレジットされています。イエメンのユダヤ人に伝わる曲とのことですが、激動の歴史のイエメン、そこに暮らしていたユダヤ人は1950年頃のイスラエルへの移送など歴史に翻弄されてきました。そんな中で多くの悲しみに出会いながらも、力強く明日を見つめる人々の姿が、この曲での演奏に込められています。オマー・アヴィタルのオードが全体を包み、各メンバーが色を添え、ヨナタンの歌も響いています。
イスラエル・ジャズマンのジャズが、この作品が登場した2006年に市民権を得たのかなと、遅れてきたイスラエル・ジャズ好きの私は思った作品です。
今日の1枚は、Third World Love の Sketch Of Tel Aviv、Smalls原盤、2005年7月の録音です。トランペット奏者のアヴィシャイ・コーエン、ベース奏者のオマー・アヴィタルなどからなるサード・ワールド・ラヴの第四作目を、今日は取り上げます。
収録曲はアヴィシャイ・コーエンとオマー・アヴィタルのそれぞれが作った曲が中心ですが、「テルアビブのあらまし」とでも訳すタイトル曲は、ピアノ奏者の Yonatan Avishai 作のものです。そこでWikipediaから彼の情報を少しばかり紹介します。
1977年にテルアビブで生まれたヨナタンは、幼い頃からピアノのレッスンを受けていたそうです。また日本に住んでいいたこともあるようです。テルアビブでミュージシャン仲間と演奏を続けていた彼は、2002年にフランスのドルドーニュに渡り音楽活動を続け、またこの年に結成されたサード・ワールド・ラヴに参加しました。このバンドでの活動で世界を渡り、ヨナタンもジャズ界で知られる存在になりました。その後はトランペット奏者のアヴィシャイ・コーエンのバンドで演奏したり、また演劇における音楽にも活動を広げていき、現在に至っています。
そんなヨナタンがメンバーのサード・ワールド・ラヴの第四作を、今日は聴いてみます。
昨日の1枚は、Eli Degibri の Twelve。
1996年にアメリカに渡ったエリ・デジブリですが、異国での活動の中で、自分の気持ちが老け込んでいくのを感じていたそうです。そんな渡米から17年後に彼は故郷に戻り、初めて録音したのが、本作のアルバム名にもなっている「Twelve」でした。(以上、ライナーノーツより)
この「Twelve」は気持ちが和んでいく演奏であり、この時のエリの気持ちがストレートに出たものなのでしょう。
本作では一曲を除いてエリ作の曲が並んでおり、人間の素直な心情を描いた曲が並んでおり、またエリの演奏と同時にそのアレンジも光っており、時には激しく時には微かにドラマを織り込んでいます。
そんな中にある「Autumn In New York」、故郷に戻ってアメリカ生活を振り返り、その土地の良さが分かってきたようなエリの姿が感じられる、穏やかな演奏になっております。
若手中心のバック陣も好演、聴きごたえある作品に仕上がっています。
昨日の1枚は、Avishai Cohen の The Trumpet Player。
オーネット・コールマンの衝撃作「Tomorrow Is The Question」にある「Giggin'」は、アルバムの中で目立つ曲とは言えませんが、その曲名の意味通りに「激しさ」に軽快感を加えた内容です。アヴィシャイは本作でこの曲を取り上げており、リズムの激しさの中で刺激的なトランペット演奏をしています。ピアノレス編成をうまく活かした演奏が、印象的です。
コルトレーンの「Transition」というアルバムは、コルトレーンのリーダー作は20枚ほど持っていれば良いや、との方には縁の無い作品でしょう。コルトレーン没後の1970年に発売されたもので、注目度は低い作品です。しかしながらこのアルバムに愛着を抱いている方々も多く、私もそんな端くれの一人です。愛着を抱く理由はそれそれですが、美しいバラッド「Dear Load」の存在は、その理由の大きな一つと言えます。アヴィシャイは本作でこの曲を、美しさを儚さの中に見出すような演奏をしています。コルトレーンのそれではマッコイの役割を、アヴィシャイはベースの弓弾きに置き換えています。
本作品を改めて聴き直すと、アヴィシャイさんはこの「刺激さ」と「儚さの美」をテーマにしての、曲作りと演奏を行っていると感じました。彼のとってコルトレーンとコールマンは、アイドルなのでしょう。そして「Giggin'」と「Dear Load」は、彼が愛してやまない曲なのでしょう。「私は大好きなこの世界を表現していくトランペット奏者になる」とのアヴィシャイさんの強い気持ちを感じる、初リーダー作品です。
19610525-14
Original Untitled Ballad (To Her Ladyship) (Billy Frazier)
(8分58秒)
【この曲、この演奏】
曲名について資料07には、「LP発売されるまで正しい曲名が分からなく、Original Untitled Balladとしていた」とあります。ただしこの記述では何故に「Original」としたのかが、わかりません。とにかく、この曲のコルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。
さて演奏ですが、コルトレーンはソプラノとテナー・サックスを使っています。哀しさ溢れるこのバラッドのテーマ、先ずはドルフィーのフルート、次にコルトレーンのソプラノ、そしてハバードのトランペットと引き継がれ演奏されています。1分43秒からコルトレーンのソプラノが再び登場しまだテーマの続きかと思わせますが、ソロへとの突入です。そのソロは、トランペット、フルート、ピアノへと続きます。そして後テーマですがここでもフルートが先陣を切り、コルトレーンのテナー、そしてトランペットへ続き、そして三管の重なりで演奏の終了を迎えます。
ドルフィーとハバードは純粋にこのバラッドに心捧げての演奏ですが、コルトレーンにはソプラノでのバラッド演奏への模索のようなものが感じられます。
資料07に、「1分43秒でサキソフォンの音がやかましくなる(squawk)」とあり、これは「it was not originally issued」だからとあります。これは意識して聴けば、なるほどと感じる程度のものです。
「イス ジャケ」作品の50枚目は、Tyree Glenn の Let's Have a Ball、1958年1月4日の録音とします。(年はネットからの情報、月日は決め付け)
この作品は「Like Someone In Love が収録されている作品をつまみ食い」で取り上げたので、イスでのつまみ食いを避けようと思いましたが、回転式カウンターチェアのジャケットは珍しく、またそれが実に似合うジャケなので、「つまみ食い」二度目の登場となりました。
2005年4月1日に「今日の1枚」で取り上げたさいの私の感想は、なんとか内容が伝わるもの。しかし2018年8月につまみ食いした際の私の感想は、何を言いたいのかサッパリ分からないものでした。
今回のつまみ食いでは、わかりやすい言葉で簡潔に感想を書きたいものです。