「ソラ ジャケ」作品の8枚目は、Brad Mehldau の Day Is Done、2005年3月13日の録音です。
Diane Cook と Len Jenshel、この男女は長いこと一緒にフォトグラファーとして活動しているようです。二人のサイトを見ますと、都会にしても自然にしても、太陽の存在を意識させる素敵な写真が並んでいます。そしてこのメルドーさんの作品のジャケも、陽が沈む瞬間を絶妙に切り取ったものです。アルバムのタイトルから日の出か日の入りかを悩む必要はありませんが、この場所がどこかを知りたくクレジットを見てもどこにも書いてあり真田でした。
この作品はポップ界の有名曲をメルドーが取り上げている作品で、私は本作を「今日の1枚」で取り上げた2005年12月23日には、ポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」について感心したことを書いておりました。
今回のつまみ食いでは、「雲の帯」(ソラ資料から)と焼け具合と手前に広がる空間が印象的なジャケを見ながら、ニック・ドレイクの「Day Is Done」をメルドーはどのように表現しているかを意識して、聴いて見ます。
さてマクリーンさんの「ソラ ジャケ」作品。
マクリーン作のA面1曲目の「Saturday And Sunday」が、この作品の存在感を示している曲でしょう。油井先生曰く「メロディー・フォー・メロネエにも比すべき凝ったテーマ」の曲ですが、この「凝り方」にマクリーンの意気込みが伝わってくるものです。そして各位のソロは、このテーマを頭の中で膨らませ、思い切りぶつけている演奏、エネルギーが溢れるものです。「考え過ぎのマクリーン」、この「考え過ぎ」が実に貴重なもの、これがエネルギーとなっています。
私が持っている盤は1987年の国内発売CDなのですが、この時期にはCD化による追加曲、別テイクをオリジナルと並べて収録しておりました。つまりは続けて同じ曲が演奏されるというものです。最後にそっと添えておけば良いものなのですが、続けるのが1980年台の流儀でした。
私が持っているCDでは、「Saturday And Sunday」も別テイクが続けて収録されていました。別テイクはオリジナルよりペースを早めて、攻撃性を増したものです。マクリーンの苦悩、そしてメンバーの憂悶が流れの僅かな違いを、両テイクを続けて聴いて、楽しみました。
今日の1枚は、Herbie Mann の Memphis Underground、Atlantic原盤、1968年8月の録音です。
ディスクユニオン関内店中古CD半額セールで、150円で購入した作品です。
ジャズ初心者の時に買わなかった有名作品は買い難いものだ、というようなシーンがラズウェル細木の漫画にありました。私もそんな作品があったものですが、今日取り上げる有名盤を買わなかった理由は「ジャズロックの・・・」「クロスオーバーの先駆け・・・」のような謳い文句に心が動かなかったからです。
そんな時からかなりの年数を経て、缶コーヒーを買うほどの思いで本作と出会えました。「今日の1枚」では、1958年の作品と1962年の作品に続く、三回目のハービー・マンの作品となります。ロイ・エアーズ(vib)、ラリー・コリエル(g)、そしてソニー・シャーロック(g)が参加しています。
昨日の1枚は、John Hicks の Friends Old And New。
古いアメリカ映画、アステアなどが踊っている映画、ショーが繰り広げられているキャバレー、そんな絵がこの作品を聴いていると、頭を駆け巡りました。
ボブ・シールの狙いはそこだったのか、それは分かりませんが、いつものヒックスとは違う一面を聴ける作品です。
今日の1枚は、John Hicks の Friends Old And New、Novus原盤、1992年1月の特音です。
ディスクユニオン関内店中古CD半額セールで、300円で購入した作品です。
ジョン・ヒックスがこのレーベルかに吹き込んでいたのに驚きですが、参加メンバーは充実したものです。クレジット順に並べますと、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(d)、クラーク・テリー(tp)、グレッグ・ギスバート(tp)、アル・グレイ(tb)、そしてジョシュア・レッドマン(ts)です。
プロデュースは、ボブ・シールです。
今日の1枚は、Michel Legrand の Legrand In Rio、Columbia原盤、1957年12月の録音です。
フランス音楽界の、そして世界の巨匠であるミッシェル・ルグランが、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロとバイーアをテーマにして制作したオーケストラ作品を、今日は取り上げます。
私はジャズ聴き始めから今に至るまで、ルグラン自体に興味を持って接したことはありません。では何故にこの作品を取り上げるかと言えば、一時期においてこの作品にコルトレーンが参加しているとされていたからです。
この作品の存在を初めて知ったのは、弊サイトの「今日のコルトレーン」コーナーでは資料09としている、「季刊 ジャズ批評 No.46、ジョン・コルトレーン特集」(1983年発行)に掲載されていたからです。そこでは「Besame Mucho」にコルトレーンが参加しているとの記録があるとし、更に「これがコルトレーンか否かについて意見の別れるところであるが、独得のタッキングといい、細かなフレージングの癖といい、まず間違いなくコルトレーンであると断言したい」書いております。因みにこの曲にはマイルスも参加している記録になっているが、そちらについては別人であろうと述べています。
これを読み、いつかこの作品が再発されたらと思っていましたが、その思いが消えたのは1996年頃かと記憶しています。同じく「今日のコルトレーン」コーナーで資料06としている「John Coltrane A Discography and Musical Biography」が発売され、本作品がリストアップされていました。しかしここには注意書きがあり、岩浪洋三氏がミッシェル・ルグランにインタヴューした際に確認したところ、本作品にコルトレーンは参加していないと語ったとのことでした。どこかのディスコグラフィが間違えたのであろう、とのことです。
弊サイト開設以来20年の思いを実現すべく、昨年1月からコルトレーン特集を始めました。先の二つの資料も何度も開くことになったのですが、その際にこの作品に目が止まり、かつての記憶が蘇りました。
Amazonで中古品を発見し、送料込みで1030円で購入した次第です。その中古CDは2007年発売の国内盤ですが、日本語解説にコルトレーン云々、マイルス云々は一言も書いてありませんでした。
昨日の1枚は、Red Garland の All Mornin' Long。
20分超のタイトル曲のA面は、ガーランドがその場で作ったような、まったりブルースです。構成を考えていると言えばそうですし、適当にソロを回していると言えばその通りの演奏ですが、それで20分を聴かせるのは、ハードバップの勢いを肌で感じている黒人ジャズマンが、日頃の鬱憤を楽しく取り除いているのかなと感じます。ウィキペディアによればアイラ・ギトラーはこの演奏を、「the title piece was a "many-splendored, deep-dish demonstration of feeling, mood and melody」と評したそうです。上手いことを言うなと思いつつ、B面の2曲も同様だと感じました。
この11月15日は計10 曲を収録しましたが、その中からジャムセッションの良質な部分を感じさせる選曲に、本作はなっております。
私は昨年から取り組んでいるコルトレーン特集で改めて本ジャケを見て、プレスティッジがガーランドのリーダー作としていることに気付きました。それまではオールスター・セッションとのクレジットと思い込んでいましたが、演奏内容からすればそちらの方が似合っていると思います。
今日の1枚は、John Coltrane With The Red Garland Trio の Traneing In、Prestige原盤、1957年8月の録音です。
1957年8月23日にコルトレーンが、ガーランド、チェンバース、そしてアート・テイラーと吹き込んだ作品です。
LP7123との規格番号で最初に世に出たのは1958年2月or3月(ウィキペディア情報)で、燃え上がる赤が印象的なジャケで、「John Coltrane With The Red Garland Trio」とのタイトルでした。後にここに掲載したジャケで、タイトルを「 Traneing In」に変更して発売されました。発売という切り口から見た場合、本作はLP7105に続く、コルトレーンのプレスティッジでの2作目のリーダー作となります。もっともBNへの吹き込み作品は1957年9月録音ながら、2ヶ月後に発売されています。(フレデリック・コーエン氏の著作からの情報)
本作をワン・ホーン作品として考えた場合、タッド・ダメロンのLP7070「Mating Call」に続く作品です。
さて本作についてコルトレーンのリーダー作というよりは、ガーランドとの双頭作品と考えている人も多いのではと思います。今回掲載ジャケですとコルトレーンが前面に出ていますが、最初に世に出たジャケならば双頭作品との印象が強くなります。しかしそちらのジャケはCDでは所有しておりませんので、このジャケの掲載となりました。
各曲についてはコルトレーン特集で触れていますので、ここではアルバム全体のイメージを感じてみます。
19590115-08
Centerpiece (Harry Edison / Bill Tennyson)
(7分8秒)
【この曲、この演奏】
全く知名度がないこの曲ですが、二人のジャズマンによるものとクレジットされています。一人は知名度があるトランペット奏者のハリー・“スウィーツ”・エディソン、もう一人は知名度が低いビル・テニスンです。ウィキペディアには記載されている方ですが、そこには次のような記述があります。
Tennyson died, aged 36, in a car crash in New York soon after completing a hit record Centerpiece with John Coltrane.
この一文から想像するに、この曲はテニスンとコルトレーンの関係から用意された曲なのでしょう。
コルトレーンの演奏記録は本セッションだけですが(資料06)、資料08によればミルトはこの曲を1976年の厚生年金会館でのステージで披露しています。
さて演奏ですが、ゆったりリラックスのブルースを披露しています。この手の演奏はジャズに限らず、ミュージシャンの存在感が鍵となります。それがなければ、だらだら流しのブルース演奏となってしまうのですが、ここではコルトレーンとミルトをはじめ、クインテットの風格を感じる演奏に仕上がっています。
ここでの演奏は「bags & trane」には収録されずに、1970年発売の未発表曲集「The Coltrane Legacy」に収録されました。
さてアリソンさんの「イス ジャケ」作品。
考えてみたら大作の後の作品は、意気込みが空回りすることがある中で、アリソンさんは落ち着いたスロー・ナンバー集を素敵に作ったものです。空回りしたのは私の感想でした。
スローな気分を支えてくれるバック陣も加わり、そして選曲のセンスも決まり、NYタイムズが「singer with a feline touch and impeccable intonation」と絶賛したアリソンさんの歌声の魅力が活きた作品になっています。
半分の6曲名に、「Blue」とのスペルが入っています。その中のジョニ・ミッチェル作の「Blue Motel Room」が、今回のつまみ食いで私の心に止まりました。「I hope you'll be thinking of me, because I'll be thinking of you」の歌詞の響き方が、Danny Embrey のギターと共に、ブルーな雰囲気で流れていきます。
表ジャケ以外の彼女の写真をみますと、シャイな彼女がそこにいます。そんなアリソンさんの魅力が本作に感じられ、実に良いものでした。