さてフェイさんの「マイク ジャケ」作品。
例えばSting作「If I Ever Lose My Faith In You」とC.Porter作「Ev'rything I Love」をアルバム中盤で取り上げていますが、芝居の一コマを感じさせる内容です。制作陣の考えでは、曲ごとに考えた絵があることなのでしょう。そしてそれはヨーロッパの街並みの中で、存在感を発揮するものなのではと思いました。
その部分を光彩あるものと感じるか、少々クサイものと感じるか、聴く人のいろんな要素で変わってくるものなのでしょう。
「マイク ジャケ」作品の12枚目は、Fay Claassen の With A Song In My Heart、2000年6月29日の録音です。
今回の「マイク ジャケ」でつまみ食いには2度目の登場となるシュアSM58が、ジャケットにあります。歌手の手持ちマイクでは定番のシュアSM58ですが、フェイ・クラッセンさんはかなり気に入っているようです。内ジャケには岩の上でのフェイさんがこのマイクを持っている写真が、6カットあります。
そんなフェイさんの本作は、2001年12月2日に「今日の1枚」で取り上げました。その際には酷評いたしました。「スキャット多用が全く効果を発揮してなく、ダラダラ感を与える。また、少しテンポが速い曲だと、彼女の歌はリズムに乗れていないんだ」と、良いところなしとの感想でした。
本作はフェイさんのデビュー作にあたり、その後も今に至るまでコンスタントに作品を発表しています。要するに支持されているということなので、今回のつまみ食いではフェイさんの良さを見つけたいです。
【この曲、この演奏】
コルトレーンは本セッションだけの演奏記録しかない曲ですが、ロリンズも資料08によれば3回しか演奏記録がありません、最初が本セッション、2度目はそれから30年後の1986年、3度目は2000年のことです。
本セッションのクレジットではロリンズ作となっていますが、資料06によればハンク・モブレー作の「Sportin' Crowd」、ケニー・クラーク作の「Royal Roost」としても知られている曲にようです。前者は1955年のBN1508 The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia, Volume 2に収録されています。
テーマ、コルトレーン・ソロ、ロリンズ・ソロ、ガーランド・ソロ、チェンバース・ソロ、コルトレーンの次にロリンズでジョーンズとの4小節交換3回づつ、コルトレーン・ソロ、ロリンズ・ソロ、20回ほどのコルトレーンとロリンズの4小節交換、テーマ。こんな風に演奏が進みます。つまりはコルトレーンとロリンズをたっぷりと聴ける内容、そして最後に怒号の4小節交換で締めるとのものです。気楽に始めたセッションですが、二週間前のマイルスとのセッションで自信満々になったコルトレーン、そして華麗な中で力を込めていくロリンズ、そんな二人で燃え上がっていく演奏です。
19560511-05
It Could Happen To You (Burke - Van Huesen)
(6分40秒)
【この曲、この演奏】
資料14によればこの曲は、1944年公開の映画「そして天使は歌う」の主題歌と知られるラブソングで、明るく軽快なナンバーですが、バラッドとして取り上げられることも多い曲です。ジョー・スタッフォードやジューン・クリスティなどの歌手にも愛された曲ですが、パウエルやソニクラなどのピアニスト、ロリンズやJ.J.ジョンソンなどのホーン奏者にも好まれた曲です。
そんな大スタンダード曲ですが、コルトレーンの演奏記録はこのセッションだけです。またマイルスもこのセッションのほかには、1952年にマクリーン入りで録音されたもの(後年フレッシュサウンドから発売)だけです。
さて演奏ですが、マイルスのミュート・トランペットの軽快な足取りで始まります。この前の曲、4曲目の「Something I Dreamed Last Night」ではお休みとなったコルトレーンは、光風霽月の心境な演奏であり、一歩成長した姿を聴き取れます。資料09では「多少まとまりのないソロ」と評されていますが、私は楽しいコルトレーンの姿と感じました。
「マイク ジャケ」作品の10枚目は、Holly Cole の It Happened One Night、1995年6月28日の録音です。歌手にはガイコツマイクが良く似合います。ホリー・コールの本作ジャケでも、ガイコツマイクが良いアクセントになっています。
2006年1月19日に本作を「今日の1枚」で取り上げた際には、良い内容ながら「ジャズではないよね」とのような感想を述べました。今回のつまみ食いでは、どのような感想になるのでしょうか。
「マイク ジャケ」作品の9枚目は、Albert Ayler の Live On The Riviera、1970年7月25日の録音です。
マイクスタンドの中間部には、アイラーさんのサックスを拾うための、恐らくはコンデンサーマイクがセットされています。そして上部にはダイナミックマイクがセットされています。
2006年1月2日に本作を「今日の1枚」に掲載したのですが、その際のアイラーさん最後の演奏についての記述が間違っていたかもしれません。ただ決定的な情報が得られていませんので、分かり次第その辺りを追加コメントいたします。
兎に角、この7月末数日間のマグー近代美術館主催の前衛音楽祭に招かれての演奏がアイラーさん最後の演奏、今日はステージでのアイラーさんの様子を思い浮かべながら聴いてみます。
さてファラオさんの「マイク ジャケ」作品。
2000人ほど収容のホールでのコンサートなのでしょう。1981年のこのライブ、観衆は熱狂を求めていたのでしょう。ファラオさんはその要求にも見事に応えた演奏をしています。「You've Got To Have Freedom」はまさにそんな曲で、演奏の他にも短いテーマを熱狂したり、メンバー紹介にと、セットされたマイクは大活躍でした。
コルトレーンの前にコルトレーン風の演奏者は無し、コルトレーンの後にはコルトレーン風の者ばかり。これはどのジャンルでも革新的な人の前後に言えることでしょう。特にファラオさんの場合は、コルトレーンの啓示を真正面から受けた方。
そんな時期から四半世紀が経ったこのライブ、ファラオさんはそんな精神とエンターテイメントが融合した存在でした。