さてリチャーズさんの「Body And Soul」。
明るく元気にスタンダードを演奏しますとの姿勢の中に、リチャーズさん節も随所に織り込まれており、恐らくは1発録りの中でメンバーとの丁々発止も楽しめる一枚です。ベースとドラムの二人はネット上では情報を得られない方々ですが、リチャーズさんはそんな二人の良さを上手く引き出す演奏をしております。
そんな中での「Body And Soul」。ロンドン郊外のビショプズ・パークでテムズ川を赤く染める夕暮れの中で、思うような展開にならない恋の行方を穏やかな外観と落ち着かない気持ちで考えているような姿が、思い浮かぶような演奏です。
「Body And Soul」が入っている作品の13枚目は、Tim Richards の The Other Side、1998年1月4日の録音とします。
ティム・リチャーズさんは今でもロンドンを中心に、コンスタントに活動されています。YouTubeにもそんな活動がいくつかアップされています。「今日の1枚」で本作品を取り上げた際には当然ながらジャズ奏者としてリチャーズさんを捉えておりましたが、YouTubeを見ると、いろんな分野に取り組んでいるようです。
2005年7月8日に私が書いたコメントを読み返すと、気に入ったが決め手が足りないとのことを、遠回しに述べておりました。「Body And Soul」での彼の演奏を聴いてみます。
さてヤコブスさんの「Body And Soul」。
1ヶ月の滞在中、大都市であるアムステルダムとロッテルダム、高級住宅街であるアムステルフェーン、そして田舎町であるサッセンハイムで過ごしておりました。アジアからの短期出張者である私は、どの街も古い建物が活きており洗練された風景に圧倒されておりました。この洗練さ、独自の香りは、ヤコブスさんの演奏にも感じ取れるものです。この作品をレビューしたネット上のコメントは、やはり洗練という言葉でこの作品を評しているものが多いのも頷けます。その上でのヤコブスさんの魅力は、決して饒舌にならずに、しかしながら表現するのに必要な言葉をしっかりと伝えてくることでしょう。爽やかな演奏の中に哀楽を響かせている「Body And Soul」、サッセンハイムのカフェで過ごした昼休みを思い出しながら聴いておりました。
さてヤコブスさんですが、1996年に61歳でお亡くなりになりました。奥様のリタ・ライスさんは2013年に89歳で亡くられなした。10歳上の姉さん女房だったのかと、今初めて知りました。
「Body And Soul」が入っている作品の12枚目は、Pim Jacobs の Come Fly With Me、1982年1月1日の録音としました。
もう10年以上前のことですが、オランダに2回出張に行きました。合わせて1ヶ月強しか滞在しなかったのですが、東南アジア専門の私にとっては初めてのヨーロッパ滞在で興味深いことの連続でした。現地法人の事務所で女性スタッフとの話の中で、私はリタ・ライスが好きだとPCに彼女の作品の写真を表示しました。当然ながら若い時の写真ですので、スタッフの女性は「今は年配だけど
今でも活動しているよ」と教えてくれた上で「彼女の旦那さんを知っている?」と私に尋ねてきました。もちろん「ピム・ヤコブスでしょ」と私は即答しましたが、ヤコブスさんもジャズファンではない一般の人にも知られた存在なのかと感心したものでした。
今回の「つまみ食い」企画でこのヤコブスさんの作品を取り上げることになり、彼の他の作品についてネット調べてみました。しかしながらディスコグラフィには出会えず、数枚のジャケット写真を見ただけでした。しかし収穫はありました。それはヤコブスはテレビプレゼンターとしても活躍していたとの情報を得たからです。音楽番組とゲーム番組を持っており、人気があったそうです。この情報に接して、10年前の出来事に合点がいきました。
長々と書きましたが、ヤコブスさんの「Body And Soul」を聴いてみます。
昨日の1枚は、The Bill le Sage - Ronnie Ross Quartet。
西海岸ジャズを上手く吸収しての演奏との表現も確かなのですが、私にはお二人の独自のリズム感を感じます。決して特徴あるものではなく、サラッとした味付けなのですが、その塩味加減が絶妙なのです。スタンダードや、お二人の洒落たオリジナル曲を楽しく聴かせてくれる40分でした。
ここまで書いたところで、念のため「「今日の1枚」掲載リストを確認したところ、ロニー・ロス
の1959年アメリカ制作の作品を取り上げていることに気付きました。そこでは「個性が感じられない、印象に残る作品ではない」と冷めた感想を述べていました。アメリカでの録音となると、ロスさんの個性を発揮しにくかったのでしょう。このイギリス通販会社制作盤では、洒落た個性を感じられました。
今日の1枚は、The Bill le Sage - Ronnie Ross Quartet、World Record Club原盤、1963年4月の録音です。
イギリスの中堅ミュージシャン二人による双頭リーダー・カルテットによる作品を、今日は紹介します。ビル・ル・サージュはヴァイブとピアノ、ロニー・ロスはバリトン・サックス奏者であります。ベースにはスパイク・ヒートリー、ドラムにはアラン・ガンリーが参加しています。
私が持っているCDは日本のノーマが2003年に発売したものですが、オリジナル・レーベル名を探すのに苦労しました。結局ネットから情報を得たのですが、このワールド・レコード・クラブは通販専門レーベルとのことです。相当の音楽好きの方々が、その通販クラブの会員になっていたようです。
昨日の1枚は、Franco Cerri の International Jazz Meeting。
店主情報の通りのギター演奏で、軽やかにジャズを演奏しましたとの作品です。またバルネの活躍場所は少なく、バルネ好きでオリジナル盤購入した方は所有の喜びを味わっただけでしょう。
イタリアのジャズが、そしてヨーロッパのジャズが本格的に個性を発揮し始める前の、微笑ましい作品として楽しく聴き終えました。
今日の1枚は、Franco Cerri の International Jazz Meeting、Columbia原盤、1961年6月の録音です。
私はこの作品を、DIWが2009年に復刻したCDで持っております。
1926年にイタリアで生まれたフランコ・チェリは、最初はギターで活動していましたが、その後にベースに変更し、1950年台にビリー・ホリディやMJQなどとも共演しました。その後はギターとベースの両刀使いで演奏を活動を行なっておりす。ここまでは「ヨーロッパのジャズ・ディスク1800」からの引用です。ウィキペディア英語版からの情報によると、まだご健在のようで、2013年までのレコーディングが確認できました。
そしてジャズの新譜を扱って40年以上、オリジナル盤の取り扱いでも有名なお店の店主からも情報を頂きました。何でもこの作品は40年の営業を通しても、オリジナル盤は2回ほどしか扱っていないとのことです。チェリのギターはスペインっぽい雰囲気で注目を浴びるものではないとのことです。しかしながらこの作品にはバルネ・ウィランが参加しており、その線で欲しがる方がいらっしゃるそうです。かつては6桁の値段で取引されていた作品とのことです。
昨日の1枚は、Diana Krall の Glad Rag Doll。
アメリカ人ならば誰もがなじみ深い曲が並んでいるのだと思います。アネット・ハンショーが1932年にヒットさせた「We Just Couldn’t Say Goodbye」、同じく1932年のジミー・ロジャーズのヒット曲「Prairie Lullaby」、「Let It Rain」はクラプトンの曲でなくJames Kendis作とクレジットされており素敵なバラッドですのでこれもヒット曲なのでしょう。こんな曲をクラールさんはハスキーさが増した歌い方で、しみじみと歌っております。日本人が聴いても心暖かくなるメロディとその歌い方に聴き入りますので、アメリカ人の方ならば涙ものなのでしょう。そう考えながらクラールさんはカナダ人とのことを思い出しましたが、出身地はナナイモという場所なので、アメリカ文化に常に接していたのでしょう。
歪んだ音を多用するギターの使い方が私が聴いてきたクラールさんの作品とは趣が違うのですが、この辺りは色々な考えによるのでしょう。
聴き終えたところで改めてタイトル名を考えて見ますと、それは長年にわたり多くの人たちに可愛がられてきた曲との意味なのでしょう。
昨日の1枚は、Eden Atwood の Like Someone In Love。
本格派歌手の力作を頭にイメージして、作品作りされている印象を受けました。確かに歌唱力は高い彼女なのですが、この作品には彼女の焦りがあるように感じます。否定的な見方になっていますが、彼女には少し力を抜いて、そして華を加えた作品にして欲しかったです。
この作品を制作した数日間のセッションから、もう一枚発売されているそうです。しかしそれ以降は、彼女の活動が見当たりません。彼女はもともと体調に不安があるようなので、ひょっとしたらこの作品が歌手としての最後の力を注いだ作品なのかもしれません。
昨日の1枚は、Zoot Sims の Live In Japan 1977 Vol.2。
ライブでのベーシストによる余興も収録されていますが、映像がないのでそれを入れる必要はなかったと思います。しかしそれなりの収録時間を確保するためには、また記録しての意味で、収められたのでしょう。或いはズートの休憩時間のためなのかもしれません。
主役のズートの演奏では、「In A Mellow Tone」での陽気に会場を盛り上げる姿、「I Got It Bad」で静かに聴かせる姿なり、第一線級のジャズマンの貫禄と、まだまだ若いんだよとの熱気が重ね合わさり、聴きごたえある内容になっています。
今日の1枚は、Zoot Sims の Live In Japan 1977 Vol.2、Marshmallow原盤、1977年6月の録音です。
わが国で、そして世界で愛されているテナー・サックス奏者のズート・シムズは、1985年にお亡くなりになりました。まだ59歳でしたので、新たな展開を期待できただけに、ジャズ愛好家から悲しまれたものでした。
今日取り上げる作品は、なくなる8年前の52歳の時の来日公演の模様を収めたもので、2009年に発売されました。そのテープがどのような経緯でマシュマロ・レーベルに持ち込まれたかは分かりませんが、封入解説によればマシュマロ・レーベルとシムズさんの未亡人との間で連絡を取り合っているとのことなので、正式販売と言えるでしょう。
本作品は第2集となっています。マシュマロ・レーベルから第1集が発売された際には、すぐに完売したそうです。その内容はスタンダード中心だったのですが、今日取り上げる第2集は上不氏曰く「地味な楽曲」が多く収録されています。
デイヴ・マッケンナ(p), バッキー・ピザレリ(g), メイジャー・ホリー(b), そしてジェイク・ハナ(d)との演奏です。
昨日の1枚は、Michel Sardaby の Night In Paris。
若い時のサダビーさんの陽気に飛び跳ねる演奏は影を潜めていますが、タッチの強さは健在の内容となっています。自然にメロディが聴いている者に届く演奏は、流石のものです。また2時間の収録時間ですので、恐らくはライブ全てを収録しているのでしょう。その中でダレる場面が無いのは、これまた流石と言えるでしょう。
「Don’t Explain」や「Canadian Sunset」での、人生の悲哀をサラリと演奏する姿は、豊富なキャリからくるものなのでしょうね。
今日の1枚は、Michel Sardaby の Night In Paris、Paris Jazz Corner原盤、2005年4月21日の録音です。
カリブ海にある仏領マルティニーク島で1935年に生まれたピアニストのミッシェル・サダビーの作品については、「今日の1枚」で6枚取り上げてきました。それらは1967年から1984年までの録音作品でした。今日取り上げるのはサダビー70歳の時に、常に活動の場としてきたパリでのライブ盤であります。
場所は、パリのど真ん中にあるL’Archipelという会場です。年っとにある写真を見る限りでは、100人ほどの収容人員かと思います。
またクレジットに本作品は、サダビーの70歳記念作品であると共に、ジャズ・ホットという雑誌の70周年記念作品とのことです。またパリス・ジャズ・コーナーというレーベルの、14周年記念作品とも書かれています。なんでもジャズ・ホット紙は、世界で初めて創刊されたジャズ雑誌らしいです。
Reggie Johnson(b),John Betsch(d)との演奏、CD二枚組です。
さてアレキサンダーさんの「Like Someone In Love」。
アレキサンダーさんは安定した出来の作品を発表し続ける方なので、この作品も安心して聴ける内容になっています。続けて演奏されるアップテンポの曲を聴いていると、いろんな分野の中心であり、かつ非常に動きが速いニューヨークの光景が目に浮かびます。勿論、今までに得てきた私の情報からの光景であり、それが真の姿かは別の話になります。
そんな光景の中で「Like Someone In Love」は、アレキサンダーのサックスとヒックスのピアノでのデュオ演奏。しかもスロー・テンポ。何故だか、恋人の思いに応えようとするがなかなか踏み込めずに悩んでいる娘さんの姿が、頭に浮かびました。
今日は頭の中でニューヨークが妙に動き回り、こんな感想を書くような気分で、本作品を聴き終えました。
「今日の1枚からつまみ食い」、今回のテーマは「Like Someone In Love」が入っている
作品です。
「Like Someone In Love」が入っている作品の10枚目は、Eric Alexander の Sunday In New York、2005年3月18日の録音です。
ニューヨークという街は、誰もがこういう街だとの見解を持っていることでしょう。ジャズ好きならばニューヨークの情報を嫌でも身につけてきたことでしょうし、映画を見ればニューヨークのいろんなシーンが自然と身についてきていることでしょう。私も多くの方と同様にそんな一人ですし、また多くの方と同じでニューヨークに行ったことがありません。従って「ニューヨークの日曜日がどんな感じですか」と聞かれても、答えようがないものです。この「今日の1枚からつまみ食い」企画でこのアレキサンダーの作品を引っ張り出して、まず最初に考えたのが「ニューヨークの日曜日」とはどんなものなのかなのですが、行ったこともないので考えはそこで止まったままになりました。しかしながら住んでいる人に「みなとみらいの日曜日は?」と問われても、千差万別の答えになるのでしょうから、ここまで書いた文章は一体なんなのかと笑ってしまいました。でもそう考えてしまったのは、情報だけは大量に蓄積されている都市だからなのでしょう。
さて本作品のタイトルが、映画の題名であり、その主題曲です。どんな映画かといえば、ネットに「恋人に身体を求められた娘が、一度は拒絶するが、兄にどうするべきか相談しに来る。娘は日頃から厳格な兄を尊敬していたが、実は彼はフリー・セックスの実践者だった」というドタバタ・コメディとの情報がありました。
さて本題。アップテンポの曲を中心に並べたアレキサンダーの本作品を「今日の1枚」で取り上げたのは、2005年10月3日のことでした。そんな中に「Like Someone In Love」が収録されています。
さてトリオ・トランジションさんの「Like Someone In Love」。
今回聴いて、この作品の魅力は華麗なスピードだと感じました。車でいうならば、スピードある走りをしながらも、タイヤを鳴らすような子供じみた真似はしないで、横に乗せた素敵な女性を安心させるような走りであります。こんな風に感じた演奏となったのは、名手3人の演奏であり、そしてその3人の呼吸が重なっているからです。最後まで素敵なドライブを行なったような気分でした。
そんなドライブ中での「Like Someone In Love」ですが、夜中のマンハッタン橋を颯爽と飛ばしている車内での、大人の男女の笑顔で恋の駆け引きをしているようなシーンが思い浮かぶような演奏でした。
セラーニさんの魅力は、センスの良さ、趣味の良さが演奏に表れていることです。特別に注目を浴びた方ではありませんが、この作品を聴けばセンスと趣味の良いイタリア男であることが分かります。ただし有名ジャズマンとはならなかったのは、個性的とは言い難い点からなのでしょう。でも、「Like Someone In Love」「Cheek To Cheek」「Autumn Leaves」と続けて演奏していく様子は、聴けば聴いたで誰もが吸い込まれるものです。
音楽畑から姿を消したかと思ったセラーニさんなのですが、調べてみましたら彼は2014年に88歳で亡くなっておりますが、舞台芸術の作曲家として活動していたとのことです。趣味とセンスの良さが活かせる現場は、ジャズではなかったようです。
「今日の1枚からつまみ食い」、今回のテーマは「Like Someone In Love」が入っている
作品です。
「Like Someone In Love」が入っている作品の8枚目は、Renato Sellani の un pianoforte per due innamorati、1963年5月2日の録音です。
「今日の1枚」を何となく始めてから20年近く経ちますが、ネット上で提供されるサービスの進歩に感心してきた20年とも言えます。このアルバムのタイトルは「恋人二人のためのピアノ」であることなど、いとも簡単に分かりました。
このセラーニさんの恋人同士に贈ったピノトリオ作品を「今日の1枚」で取り上げたのは、2000年8月9日のことでした。「ガーランドを少しトロクしたよう」「ソニ・クラを少しトロク」と失礼なことを述べながらも、「聴き進むに連れて、このトロク感じた部分が独特の間、セラーニの大きな個性に変って聴けるようになりました」としておりました。
「Like Someone In Love」を中心に聴きながら、セラーニさんの個性をもう少し深く探ってみます。
さてパメラさんの「Like Someone In Love」。
それなりに生きてくれば、優しいと感じる人に多く出会ってくることでしょう。そんな優しい人でも、長く付き合っている人ならば、印象が違う面にも接することがあります。しかしながら、そんな面には一度たりとも接したことがない、真に優しいと思う人もごく僅かですがおります。
このパメラさんも、そんな真に優しい人なのではと、演奏から感じました。これを感じたということは、パメラさんは自身を映し出す演奏技術を身につけている方と言えるのでしょう。そんな中での「Like Someone In Love」は、優しい女性が片思いになっていく様子が映像で浮かんでくる演奏です。
「今日の1枚」で取り上げてから17年経ち、優しさとはかけ離れた自分でも、少しは優しさが分かるようになってきたのでしょう。数年後にもう一度この作品を聴けば、この作品の良さがさらに分かるような気がします。